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痔になりたること

疣痔とは何か だいぶ前のことだが、痔になったことがある。痔と言ってもいろいろあるのだが、疣痔(疣は「いぼ」と読む。痔は国語辞典的には「じ」でるが、広く「ぢ」とも表記される。ATOK では「じ」でないと変換されない。)である。疣痔とは、肛門のところに血管の集まった疣のようなでっぱりができるのである。別にこの疣が破れたりしなければ血は出ないわけで、痔といっても血が出るものばかりではないのでる。これは、痛い場合も多いのだそうだが、不思議と私の場合は痛くなかった。

できたばかりのときは、血がでるわけでもないし、放っておいたら小さくなって治ってしまうのではないかと楽観していた。しかし、だんだん疣状のものは大きくなって、とうとう一センチ近くまで成長した。指で押してみると柔らかい。

ありがたいことに痛くはないが、尻の穴のふちに疣状のものができると、相当情けない気分になる。いつも何か尻に挟まっているようで、何をするにも力がはいらない。しかたがないから、医者に行くことにした。(後編「様々なる体位」へ続く)

様々なる体位 私が行った総合病院は待合室というものがなく、廊下に椅子があって、患者たちはてんでに座って待っている。肛門科の前に座っているヤツのうち、ほとんどは痔に違いない。若い女もかなりいた。

さて、この日診察をした医者は男だった。十年も昔のことなので、顔は覚えていない。あたりまえであるが、ベッドの上で尻を出させられた。一応白いカーテンがあって、診察室のドアを開けたヤツやら尻が見えないようになっていたと思う。さて、私は犬のような恰好をさせられて診察を受けた。診断はもちろん痔。

治療方針は、血管がかたまって疣状になった部分から血を抜くこと。その方法は、注射器をさして吸い出すのである。もちろん、こんなことで麻酔は使わぬ。もっとも、それほど痛いものではなかった。血は出たが、ひどいものではない。しばらくしてパンツとズボンをはいて帰った。「痔の手術」などという恐ろしい言葉をしばしば耳にするので、最悪のことも想像していたが、思ったより簡単で、ほっとする。

次の日、経過観察のために、再度診察を受ける。こんどは女医だった。おばちゃんというには若い医者だが、不思議なことに、別に恥ずかしいとは感じない。モノとして扱われる以上、私の精神もモノとして反応するのみであるからか。とにかく勝手知りたる(勝手尻たるではない)というところを示すべく、颯爽と犬の恰好で診察台に上る。

ところが、女医はその体位には不満であった。仰向けになれという。仰向けになると、チンコがよく見えるので、あまり有り難いとは思えないが、言われたとおりにするしかない。すると、自分の足を持てと言う。赤ん坊がオムツを取り替えられるときのような姿勢にさせられた。

結局、経過に問題はなく、通院すること二回で、診察・治療は終了した。血を抜いてからすっかり元通りで、さわやかな尻が戻ってきた。まったく、やれやれ、であった。(この項おわり)

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