例えと喩え

窃盗とは如何なるものかと問われて、空き巣を例に出して説明したとする。ああ、そういうことかと納得する。たしかに空き巣は窃盗であるが、窃盗というのはもうちょっと抽象的な概念である。スリや置き引きなんかも窃盗である。そうやって例を追加していくと、だんだんわかってくる。

例から始めるのは結構であるが、例に囚われるとちっとも理解できないものもある。高校のときは、ベクトルというものを「方向と大きさだけを考えた有向線分」という具合に教わる。たしかにそれもベクトルだが、ベクトルというのはもっと抽象的な概念である。高校の教科書はその抽象性を避けて、最初から最後までこのベクトルの一例を使って説明する。ちょうど窃盗の説明をするのに常に泥棒を引き合いに出すみたいな感じだ。

これは、妄想を得意とする文系人間には、ちょっとキツい。いきなり長さだの面積だのが実感できる空間に投げ込まれてしまうからだ。たしかに教科書を読むと内積のことは、線形性を説明した後に書かれてはいる。しかし、この後で内積が定義されるまで、ベクトルに

@kabipanotoko